映画 キサラギ & ドラマ リーガル・ハイ (#9) |
マイナーアイドル「如月ミキ」の一周忌(オフ会)に集まった5人の男が、ほぼその会場である部屋内だけで繰り広げる密室推理劇。
よって面白さはほぼ脚本力に依存すると言える。
そして、評判通りのかなりの面白さだった。
塚地扮する「安夫」があまりにも「ギャグ担当」で、どうなっちゃうんだろ・・・ とか、後半の謎解きがチープで、こんなに解りやすくてこの後どうするんだろ・・・ とか、所々で湧き起こる疑問も、ちゃんと全て対処、解決してくれる脚本の魔術(^^;
心に残る最後のセリフ、、、
いちご娘:「物事に偶然はない すべて必然だよ 天体と同じでね」
家元:「僕たちが 今ここにいる事に意味があるんですね」
なんか、自分が昔アイドル好きだったこと、いまだに小高恵美を聴き続けていることに誇りが持てる。共感と懐かしさが沸き上がってくる・・・
そして、しっかり泣けます・・・
そんな要である脚本は、古沢良太(こさわりょうた)によるもの。
『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズや、脚本スゲーな、としばしば思わされる『相棒』シリーズも何話か手がけている。
そして、ごく最近、脚本スゲーな! と思わされたのがドラマ『リーガル・ハイ』だ。
ギャグの確実さ、キャラの立ちっぷり、笑いと感動の行き来自在、一分の隙もないテンポの良さ、と放送期間は毎週、一番の楽しみとしていたのだが、中でも度肝を抜かれたのが第9話。
これも今さらだが、今さらキサラギを観て古沢良太脚本スゲー、そーいやリーガル・ハイも・・・ という流れ、、、
■ドラマ リーガル・ハイ 第9話「恩讐の村人よ…美しき故郷を取り戻せ!!」
第9話については、検索すればわんさか出てくるし、セリフを書き起こしている方も当然いるのだが、初志貫徹、ここに自分なりにも記しておく。
9、10話はラストへの一番の山場。始めから終わりまでこのエピソードには『七人の侍』オマージュが見受けられる。
そして、これが現在の日本国民に対して向けられたセリフなのだと受け取り、とても胸が熱くなった・・・
自分は、しかとそのメッセージ、受け取った、とここで言いたい・・・
物語は・・・
今は合併し、南モンブラン市と名を変える旧絹美村は、誘致した大企業仙羽化学の工場による公害に苦しみ、村の老人たちが公害訴訟を起こすため、無敗の弁護士古美門を頼る。
しかし老人たちが大企業相手の訴訟を「戦争」でなく「ズワイガニ食べ放題ツアー」としか思っていないという古美門の杞憂はまさに現実化する。
この世には金より大事なものがある、と、2000万(一人頭100万弱)の見舞金で仙波化学との裁判を止めようとする老人たちに古美門の熱弁が始まる・・・
----------以下セリフ----------
古美門:「見たまえ。彼らのこの満足そうな表情を。ズワイガニ食べ放題ツアーの帰りのバスの中そのものじゃないか。
黛君。よく覚えときたまえ。これが この国の なれ合いという文化の根深さだ。
人間は 長い年月飼い慣らされると かくも ダニのような生き物になるのだよ。」
譲二(丹古母鬼馬二):「ダニ? 俺たちのこと言ったのか?」
古美門:「他に 誰かいますか? 自覚すらないとは ホントに うらやましい。
こけにされているのも気付かないまま 墓に入れるなんて幸せな人生だ。」
三郎(田村泰二郎):「あんた。ちょっと ひどいんじゃないか!」
古美門:「申し訳ありません。最初に申し上げたとおり 皆さんのような 惨めな老人どもが 大嫌いなもんでして。」
譲二:「おい 若造。お前 何なんだよ! お前 そんなに偉いのか!」
女性:「そうよ。」
久子(吉田幸矢):「目上の人を敬うってことがないの?」
三郎:「私たちは 君の倍は生きてるんだ!」
古美門:「倍も生きていらっしゃるのに ご自分のことも 分かっていらっしゃらないようなので 教えて差し上げているんです。
いいですか?
皆さんは 国に見捨てられた 民。棄民なんです。
国の発展のためには 年金をむさぼるだけの老人なんて 無価値ですから ちり取りで集めて端っこに寄せて ようかんを食わせて 黙らせているんです。
大企業に寄生する 心優しいダニ。それが皆さんだ!」
黛:「先生。もう やめてください。」
譲二:「てめえだって ダニに寄生してる ばい菌じゃねえか!」
久子:「私たちの何が気に入らないの!」
古美門:「かつて この地は 一面に桑畑が広がっていたそうですよ。
どの家でも 蚕を飼っていたからだ。
それは それは 美しい絹を紡いだそうです。
それを たたえて 人々は いつしか この地を「絹美」と呼ぶようになりました。
養蚕業が衰退してからは 稲作に転じました。
日本酒に適した 素晴らしい米を作ったそうですが 政府の農地改革によって それも 衰退した。
その後は これといった産業もなく 過疎化の一途を たどりました。
市町村合併を繰り返し 補助金で しのぎました。
5年前に化学工場が やって来ましたね。反対運動をしてみたら お小遣いが もらえた。
多くは 農業すら 放棄した。
ふれあいセンターなどという 中身のない 立派な箱物も建ててもらえた。
使いもしない 光ファイバーも引いてもらえた。ありがたいですね。
「絹美」という 古臭い名前を捨てたら 南モンブラン市という ファッショナブルな名前になりました。何て ナウで ヤングで トレンディーなんでしょう!
そして 今 土を汚され 水を汚され 病に冒され この土地にも もはや住めない可能性だってあるけれど でも 商品券もくれたし 誠意も絆も感じられた。
ありがたいことです! 本当に よかった よかった!
これで 土地も 水も 蘇るんでしょう! 病気も治るんでしょう!
工場は 汚染物質を垂れ流し続けるけれど きっと もう 問題は起こらないんでしょう!
だって 絆があるから!」
譲二:「がー!」
黛:「ちょっと 皆さん! 落ち着いてください!」
(譲二、古美門に殴りかかる)
黛:「先生! ちょっと 離れてください。」
譲二:「放せ!」
黛:「大丈夫ですか?」
譲二:「てめえなんか ぶっ殺してやる!」
三郎:「譲二の気持ちは もっともだ。」
久子:「そうよ。どうして そんな ひどいことが言えるの! あんたは 悪魔よ!」
春夫:「あんたなんかに 俺たちの苦しみが 分かってたまるか!
俺たちだって あんたの言ったことぐらい 嫌というほど 分かってる。
みんな 悔しくて悔しくて 仕方ねえんだ。だけど 必死に気持ちを押し殺して 納得しようとしてるんじゃねえか!」
古美門:「なぜ?」
春夫:「なぜ?」
古美門:「ごみくず扱いされているのを 分かっているのに なぜ 納得しようとしているんです?」
春夫:「俺たちは もう 年寄りなんだよ。」
古美門:「年寄りだから 何なんですか?」
春夫:「具合が悪いのに みんな 頑張ってきたんだ!」
古美門:「だから 何だってんだ!」
古美門:「だから いたわってほしいんですか? だから 慰めてほしいんですか?
だから 優しくされたら すぐに うれしくなってしまうんですか?
先人たちに申し訳ないとは 子々孫々に恥ずかしいと思わないんですか?
何が 南モンブランだ。絹美村は 本物のモンブランより はるかに美しいと どうして 思わないんですか!
誰にも 責任を取らせず 見たくないものを見ず みんな 仲良しで暮らしていけば楽でしょう。
しかし もし 誇りのある生き方を取り戻したいのなら 見たくない現実を見なければならない。
深い傷を負う覚悟で 前に進まなければならない。戦うということは そういうことだ!
愚痴なら 墓場で言えばいい!
金が全てではない? 金なんですよ。あなた方が 相手に一矢報い 意気地を見せつける方法は。
奪われたものと 踏みにじられた尊厳に ふさわしい対価を 勝ち取ることだけなんだ!
それ以外に ないんだ!
錦野 春夫さん。
あなたは 元 郵便局長だ。幾度となく 閉鎖されそうになった村の郵便局を 最後まで守り抜いた!
守口 三郎さんは 小学校の校長先生。村にいた 子供たちは みんな あなたの教え子だ!
奥さんの 久子さんは 街のデパートの化粧品売り場で 月間売り上げの記録の保持者!
郷田 譲二さんは 実に100haもの田畑を開墾した!
鎌田さと子さんと ご主人は 田んぼをやりながら 日雇いの仕事を幾つも幾つも 掛け持った!
富田 康弘さんは 商店街の会長。毎年 祭りを盛り上げて あの クリスタルキングを呼んだこともある!
板倉 初枝さんは 女だてらに クレーン車を動かし 6人の子供を育て上げた!
敗戦の どん底から この国の最繁栄期を築き上げたあなた方なら その魂を きっと どこかに 残してる!」
・・・・・(涙ぐみ古美門を見つめる黛)
古美門:「・・・はずだと期待した 私が愚かでした。
いいですか? 二度と老後の暇つぶしに 私を巻き込まないでいただきたい。
心優しいダニ同士 お互い 傷を なめ合いながら 穏やかに 健やかに どうぞ くたばっていってください。
それでは 皆さん さようなら!」
(帰ろうとする古美門、そこへ入ってくるさと子)
さと子:「たねさん。今 息 引き取った。」
一同:「えっ!?」
さと子:「たねさんの遺言。
死んだら 全員で 遺影を持って傍聴席を埋め尽くせ 裁判長にアピールするだろうからって。」
譲二:「1人で 頑張ってたな。田んぼ。」
さと子:♪「えんやこら どっこいせ どっこい こらこら よーい よい」
一同:♪「えんやこら どっこいせ うんとこ せーの さっさ
えんやこら どっこいせ わんさか わんさか しゅっ しゅっ!
えんやこら どっこいせ どっこい こらこら よーい よい」
(一同揃って足踏み)
一同:♪「えんやこら どっこいせ うんとこ せーの さっさ
えんやこら どっこいせ わんさか わんさか しゅっ しゅっ!」
(一同の笑い声)
春夫:「先生よ。あんたなら 幾ら取れるっていうんだ?」
古美門:「それを決めるのは あなた方だ。好きな金額を言えばいい。
私が取って ごらんに入れよう。」
春夫:「負けたら あんた 責任 取れんのか?」
古美門:「責任 取るわけないでしょう!」
春夫:「はした金 あの世へ持っていっても 仕方ねえか。ハハッ。」
久子:「絹美の者の意地。見せてやるかね。」
三郎:「どうせ 死ぬなら 仙羽化学 道連れだ!」
春夫:「先生。もう投げ出したりなんかしねえ。
最後まで 俺たちと 戦ってくれよ。」
(老人たちのギラギラした目を見て)
古美門:「少しは ましな目になられましたね。」
(用意されていた村の水をコップにつぎ、一気に飲み干す古美門。それを見て涙を流す黛。
黛も続いてコップに水をつぎ、飲み干す。決意を新たに笑顔でうなずき合う一同・・・)
----------セリフここまで----------
な、長かった(^^; 思っていた以上に・・・
この回を観たときは、今、これが電波に乗っていることに正直ブットビました、、、 スゴい、言いたいことを作品に込める・・・
第9話の録画だけは消せず、ようやく当初思った通り書き取ったが、そのために観るたび、目頭が熱くなる。
今の自分には観て感じることしかできないが、それでもこういう気持ちにさせてくれる作品を作り出すことに敬意を表し、ここに記しておきたい。