『地域再生の罠』 久繁哲之介 |
図書館でNPOや地域再生の本を探していて発見。どんぴしゃなタイトルに惹かれ、軽い気持ちで借りてみたら予想外の面白さ。これは手元に置いておきたい本だ。
常日頃思っていることを、きちんと並べて解説してもらえると、「やっぱりそうか!オレもそうだと思ってたんだよ・・・」を超えて、「あれ?これ(別な問題)も同じことだよね・・・」という気づきにもつながる。
読書は、知らなかった情報を仕入れるのはもちろんだが、もともと自分自身が持っている情報の再確認と、関連づけ、拡張をもたらしてくれるんだ、と今さらながら思う・・・ のもきっと何度目かであるのだろうが(^^;
内容は、地域再生やさまざまな社会問題に取り組む公的な施策のほとんどにおいて、「どーしてそーなるの?」的な方向に向かっての大量な資金や人材の浪費を、市民不在で断行し、仕分けられようが恥をさらそうが断固として続けられる現実を、目の前に並べてくれるものだ。
非常に不快な現実ばかりだが、皆が認識を共有して、叫び続けなければ現実は変わっていかない。
こういう本がたくさんの人に読まれれば良いのに、と思うし、こういった主題の番組や報道、ドラマがたくさんあって然るべきだと思うのだが、、、
さて、本当に必要なものにお金をかけられず、知らず知らずのうちに使えないものにお金が使われてしまっている原因をたどっていくと、やはりそこには「経済至上主義」があるようだ。
そんな、いよいよシステム不全に陥りつつある「経済至上主義」に端を発する問題以外にも、ヨーロッパ、アメリカ、日本の街作り文化の違いや、それぞれのNPOやボランティアに対する認識の違いなどを織りまぜつつ、地域再生の間違いを正す。
もともと疎い上、受動的姿勢では情報がほとんどシャットアウトされているとすら思えるヨーロッパの情報は、自分にとって新鮮で「目からウロコ」だった。
また、特に最近、どうして昔のように、まったりと好きなものを眺めていられるお店が身の回りから姿を消したのか、と首をひねっていたその答えも予想外に得ることができ、スッキリした。(自分自身が変わったという原因もあるだろうが・・・)
お店に限っていえば、『新宿駅最後の小さなお店 ベルク』という本にもさまざまな啓発を受けたが、さらに自分の理想とする『趣味の聖地』としての形が見えてきた・・・
が、その理想の形は「儲からないだろう」というのがこの本の結論でもある・・・
見えない何かに搾取し続けられて崩壊するのが早いか、気づいた人々が新しいシステムを構築するのが早いか、、、
大きな過渡期なのだろう。
過渡期といえば個人的にも大きな過渡期を迎える自分だが、失敗する地域再生の特徴と自分の共通点に気づき、苦笑いするしかなかった。
それは・・・
自分に元来備わっているもの、築き上げてきた性質に気づかず、ないものねだり。
他者の成功事例や、目先の金になるものに強力に吸引される、ということ。
読んで良かった。